SAHの重症度

ICUにSAH(クモ膜下出血、subarachnoid hemorrhage、エスエーエイチ)の患者さんが,2名入院しました.

Aさんは、左中大脳動脈瘤(MCA aneurysm)の破裂でクリッピング術を行いました.クモ膜は脳表面全体を包んでいる膜なので,局所の動脈瘤が破れても脳表面全体に出血するため重症化します.

Bさんは椎骨後下小脳動脈分岐部動脈瘤(VA-PICA aneurysm)の破裂でコイル塞栓術を行いました.

今日はエス・エー・エイチの重症度に関する勉強です.

SAHの重症度はどのように評価分類されるか知っていますか?

最も有名なのは、Hunt & Kosnik(ハント・アンド・コスニック)の分類です.

Grade0 未破裂脳動脈瘤

Grade1 無症状、または軽度の頭痛と項部硬直

Grade1a 急性の髄膜刺激症状はないが神経脱落症状が固定

Grade2 中等度以上の頭痛、項部硬直はあるが、脳神経麻痺以外の神経脱落症状はない

Grade3 傾眠、錯乱、または軽度の神経脱落症状

Grade4 昏迷、中等度以上の片麻痺、除脳硬直の始まり、自律神経症状

Grade5 深昏睡、除脳硬直、瀕死状態

H&K gradeでは,3つのことを知っておいてください.

①Grade1から5になるに従い、より重症になる

②意識障害がなければ、少なくともGrade2以下(意識障害があれば、Grade3以上)

③迷わず手術するのは、Grade3以下の症例

最近では,GCSをもとにしたWFNS gradeもよく使われています.

さてAさんはH&K Grade1、BさんはGrade3なので,Bさんの方が重症です.

ここまでの話は、一般的な教科書にも書いてありますが、

もう少し重症度について、病態生理から考えてみることにします。

①クモ膜下出血がおこると,血中カテコラミンが上昇します.

(たぶん緊急事態であることを体全体に連絡させるため、神様が用意した機能のひとつなのでしょう.)インスリン拮抗ホルモンであるカテコラミンの急激な上昇は血糖を上昇させます.

ホメオスターシスが働きインスリンが分泌され,細胞内にブドウ糖を取り込むと同時に血中Kも取り込みます(これを利用したのが高K血症の際に行われるグルコース・インスリン療法).

この病態生理を用いて,クモ膜下出血患者さんでグルコースと血中Kの比(Stress Index ストレス・インデックス= Glu/K)を調べてみたら,Stress Indexは、クモ膜下出血の重症度や血中カテコラミンの値と相関関係があることがわかりました.

急性期クモ膜下出血の患者さんを、ERでみていない病棟のナースでも、入院時血液データをみてみれば,その患者さんがどれほど重症のクモ膜下出血であったのか知ることができるのです.

ちなみにStress Indexのおおよその正常値は100/4=25ぐらいですが,重症例では40を越えるといわれています。

Aさんは、血糖値107 Kが3.9 なので、Stress Index = 27.4

Bさんは、血糖値148 Kが3.6 なので、Stress Index = 41.1

Stress Indexから評価しても、Bさんの方が重症であることがわかります。

②白血球は痛みがあると上昇することがあります.理由はよくわかっていませんが,クモ膜下出血の患者さんでは,白血球が上昇しています.171例のクモ膜下出血例のWBCを検討してみると,20000を越えていたものは重症で死亡率が50%であったという報告もあります.Stress Indexの計算がめんどうであれば,入院時のWBCのみに注目してもよいですね.

Aさんは、WBC 12000

Bさんは、WBC 9000

であり白血球数からみると,2人とも死亡してしまうほどの重症でないと評価されます.

キーワードは、SAHの重症度、Stress Index、カテコラミンの上昇です.

特に、クモ膜下出血を起こすと,カテコラミンの上昇する病態は大切なポイントです!

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